49 人権を正当化する二つの方法 (Two ways to justify human rights)(20230911)

[カテゴリー:日々是哲学]

人権を正当化する一つの方法は、<より上位の目的の実現のための手段>として正当化することです。

人権概念は、歴史的には、キリスト教に由来するものです。ジョン・ロックは、『市民政府二論』で、人は、神がその目的を実現するための手段であるので、価値を持つと主張しました。ここでは、人権は、より上位の目的の実現のための手段として正当化されています。「より上位の目的」にあたるのが、「神が設定する目的」ということになります。(神を認める人が、このような仕方で人権を正当化するとは限りません。スピノザは、神は意志を持たないと考えましたので、スピノザならば、違った仕方で、人権を正当化するでしょう。もっともスピノザはキリスト教徒ではありません。)

資本主義社会は、契約による商品交換を基礎としています。そこでは、人間の労働力も商品の一つです。それは、(精神活動を含めて)労働力を商品とみなしますが、しかし他方で、人間はそれらの商品の売買契約の主体として尊重されます。したがって、資本主義社会では、人間は、商品の所有とその売買契約の主体としての権利を持ちます。ジョン・ロックは、所有権を人権の基本とみなしました。資本主義は、その契約社会を成り立たせるものとして、人権を正当化します。ここでも人権を<より上位の目的(資本主義社会の成立)の実現のための手段>として正当化します。

人権を正当化するもう一つの方法については、次回に書きます。

投稿者:

irieyukio

問答の哲学研究、ドイツ観念論研究、を専門にしています。 2019年3月に大阪大学を定年退職し、現在は名誉教授です。 香川県丸亀市生まれ、奈良市在住。